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森岡毅の『確率思考の戦略論』第2章を読んでみた


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尊敬して止むに止まないナニワの軍師こと森岡毅氏の『確率思考の戦略論』を読んでいて、ヒジョーに良かったのでざっくりまとめておこうかと。

 

確率思考の戦略論  USJでも実証された数学マーケティングの力

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

 

 

 

代理店でデータサイエンティストをやっていると、事業会社のマーケットに対する視点や考え方は営業からの又聞きになる上、現場レベルの価値観にすぎないため、体系だっていなかったり目先のKPIの話に終始することが多いです。

本書でのトップクラスのマーケターの視点、しかも数学を駆使した戦略レベルでのマーケティングの話は実務でも有用だなと思ったのでまとめます。一旦第2章をば。

森岡毅ってそもそも誰ぞ

 マーケティングの統括として、経営危機に陥っていたユニバーサルスタジオジャパンのCMOとして、来場者数をV字回復させたことで有名方です。

もともとP&Gでブランドマネージャーとして実績を重ねていたところ、当時のUSJのCEOにヘッドハントされ、CMOになられたようです。先月で退任※1されています。

数学が得意で、データを駆使したマーケティング戦略を立案するスタイルのマーケターです。

NHK プロフェッショナル 仕事の流儀に出てたときに、レクサス乗ってワーグナー聞きながら通勤してた画が印象的でした。かっけーなー

 

戦略の本質とは何か?

この点に関して森岡氏は"勝てる戦を探す"ことが重要と述べています。USJでの森岡氏の戦績は64打数63安打と打率は9割8分を超えています。「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」と孫氏の兵法でありますが、まさにそのとおりですね。それほどの高いヒットを出す秘訣は、"市場構造"を理解し、コントロール可能なところに経営資源を集中することです。一方で、そのコントロール可能なことは限られているとのことです。

戦略の焦点

それが以下の3つです。

  • Preference(好意度)
  • Awareness(認知)
  • Distribution(配荷)

このうち特にプリファレンスが最も肝で、ブランドエクイティー、価格、製品パフォーマンスによって決定されます。

一方で、問題のあるビジネスは認知と配荷に問題があることが多いようです。

 認知の伸びしろを探す

あるレベルまでは認知の伸びに対して売り上げが直線的に伸びていくため、競合商品と比較した際に低い場合は認知率を改善することが得策です。

認知率の指標としてAided Awareness(ユニバーサルスタジオジャパンを知っていますか?と聞くタイプ)とunaided Awareness(レーマパークと聞いて思い浮かぶブランドは何ですか?と聞くタイプ)が利用されています。前者は需要予測に、後者はエヴォークドセット(消費者が買っても良いと考える商品リスト)のモニタリングに利用しているようです。

2014年にリリースしたウィザーディングワールドオブハリーポッターの事例では目標売り上げから逆算した認知率が90%という高水準だったため、テレビだけではリーチできないため、Yahooの純広告などのデジタルメディアにも広告出稿していたようです。

配荷の伸びしろを探す

小売店の棚に占める自社ブランドの配荷率を高めることも重要です。配荷率には大きくストアアカウント配荷率(自社ブランドを取り扱ってくれる店舗の割合)とビジネスウェイト配荷率(店舗の売り上げ規模等でウェイトバックしたレート)があります。

配荷面積を増やすためにはルート営業によって商品を置いてもらえるように小売店側にお願いするのも重要ですが、自社ブランドの小売店における役割を競合のポジショニングに比して明確にする必要があります。

また、配荷の質も重要で、小売店舗に来客する消費者のプリファレンスを捉えた配架にする必要があります。

プリファレンスの伸びしろを探す

森岡氏のいうプリファレンスとは自社ブランドが選ばれる確率であり、下記のような負の二項分布に従います。

NBDモデル

 Pr = \frac{(1+M/K)^{-k}Γ(K+r)}{Γ(r+1)Γ(K)}(\frac{M}{M+K})^{r}
 
この式におけるMは、自社ブランドをすべての消費者が選択した延べ回数を消費者の頭数でわったもので、Kは分布の形状にかんする指標です。つまり、プリファレンスを高めるためにはMを高めることに他なりません。Mを高めるための戦略として、商品の利用者を増やす水平拡大と商品の利用頻度を増やす水平拡大があり、森岡氏の経験的に前者のほうが成功する確率が高いらしいです。理由としては、前者のほうがマーケットが大きいのに加え、水平拡大すれば自然と垂直拡大も同時に実現できるからです。
 
 
NBDモデルは別途使い方をまとめることにしたいと思います。
 
以上のように森岡氏的数学マーケティングでは、プリファレンス/認知/配荷をKPIとすると売り上げ最大化を実現できるとのことでした。
 
確率思考の戦略論  USJでも実証された数学マーケティングの力

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

 

 

参考

※1 ハリポタ仕掛けた森岡毅執行役員が退社へ USJ“V字回復”の立役者(1/2ページ) - 産経WEST